意味・由来
「手を尽くす」(てをつくす)
【意味】
「手を尽くす」とは、考えられるあらゆる手段を用いて全力で対処することを表す慣用句です。「尽くす」は「すべてを出し切る」という意味で、持てる手段・方法・能力のすべてを投じて問題に取り組むことを指します。医療の場面で「手を尽くしたが助からなかった」のように、最善の努力を尽くしたことを表す文脈で特に多く使われます。結果の成否にかかわらず、過程における全力投球を示す表現であり、「やれることはすべてやった」という達成感や覚悟を伴う言葉です。
【由来・語源】
「手を尽くす」の「手」は手段・方法を意味し、「尽くす」は残らずすべてを使い果たすことです。つまり「利用可能な手段をすべて使い果たす」というのが字義通りの意味です。この表現は、武術における「手」(技の手)をすべて出し尽くすことに由来するとも言われます。剣術の試合で持てる技のすべてを使い切ることが「手を尽くす」であり、それでも勝てなければ相手が上だったということです。医療の世界では、あらゆる治療法を試みることを「手を尽くす」と表現し、最善を尽くしたことの証として使われてきました。
【使い方のポイント】
「手を尽くす」は「手を尽くして○○する」「手は尽くした」の形で使います。「手を尽くして交渉した」「手を尽くしたが及ばなかった」「できる限りの手を尽くします」のように使います。ポジティブな結果にもネガティブな結果にも使えますが、特にネガティブな結果(失敗、不成功)の場合に「手を尽くしたのだから仕方ない」という受容のニュアンスで使われることが多いです。医療現場では「手を尽くしましたが…」は最も辛い報告の前置きとして使われます。「手を尽くす」は過去形で使うことが多く、「手を尽くしている最中」という進行形はやや少ない表現です。
【類似表現との違い】
「全力を尽くす」は広く全力で取り組むことで、「手を尽くす」のように手段のすべてを使うというニュアンスはありません。「手を打つ」は特定の対策を講じることで、「手を尽くす」のように包括的ではありません。「万策尽きる」は結果としてすべての手段が効果なく終わったことで、「手を尽くす」は行為のプロセスに焦点があります。「八方手を尽くす」は「手を尽くす」の強調形で、あらゆる方向に手を広げて対処することを表します。「ベストを尽くす」は英語由来の表現で、「手を尽くす」とほぼ同義ですがややカジュアルです。
【豆知識】
「手を尽くす」は日本の医療ドラマでは定番の台詞です。「我々は手を尽くしました」という医師の言葉は、視聴者にとっても非常に重い響きを持ちます。実際の医療現場では、「手を尽くす」の範囲が時代とともに大きく変化してきました。昭和初期に「手を尽くす」ことができた治療法と、現代の高度医療で「手を尽くす」ことができる治療法では、その内容が根本的に異なります。例えば、心肺蘇生法、人工呼吸器、ECMO(体外式膜型人工肺)など、かつては存在しなかった医療技術が次々と開発され、「手を尽くす」の中身は常に更新されています。一方、法学の世界では「注意義務を尽くしたか」(必要な手を尽くしたか)が過失の有無の判断基準となり、「手を尽くす」ことは法的な責任とも結びついています。
使い方・例文
手を尽くしましたが、今回の契約は見送りとなりました。
手を尽くして探したけど、なくした指輪は見つからなかった。
医師団は手を尽くしたものの、残念ながら患者を救うことはできなかった。
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クイズ
「手を尽くす」とはどういう意味?