意味・由来
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」(すぎたるはなおおよばざるがごとし)
【意味】
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とは、何事もやりすぎることは、足りないことと同じくらい良くないという意味のことわざです。適度・中庸こそが最善であり、いくら良いことでも度を超えれば害になるという教えを説いています。努力、親切、節約など、本来は良いとされる行為であっても、行き過ぎればそれぞれ過労、おせっかい、ケチとなるように、バランスの重要性を教える表現です。
【由来・語源】
出典は『論語』先進篇です。弟子の子貢が孔子に「子張と子夏ではどちらが優れていますか」と尋ねたところ、孔子は「子張はやりすぎ(過)で、子夏は足りない(不及)」と答えました。子貢が「では子張の方が優れているのですか」と重ねて問うと、孔子は「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と答えました。つまり、やりすぎても足りなくても等しく良くないのだから、子張が優れているとは言えない、というのが孔子の教えです。儒教の根本的な価値観である「中庸」の思想がこの一言に凝縮されています。
【使い方のポイント】
何かをやりすぎている人に対して、バランスを取るよう促すときに使います。仕事のしすぎ、食べすぎ、心配のしすぎなど、あらゆる「過剰」に対して使える汎用性の高い表現です。ただし、まだ努力が足りていない人に使うと皮肉に聞こえることがあるため、本当にやりすぎている場面で使うのが適切です。「ほどほどが一番」というくだけた言い方と同じ教訓ですが、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」は格調高い表現として文章向きです。
【例文】
《ビジネスシーン》
品質管理を徹底するのは重要だが、チェック工程を増やしすぎて納期が守れなくなっては本末転倒だ。過ぎたるは猶及ばざるが如しで、適切なバランスを見つけることが経営の腕の見せどころだ。
《日常会話》
健康のためにサプリメントを飲むのはいいけど、十種類以上も飲んでいるのはさすがにやりすぎじゃない?過ぎたるは及ばざるが如しだよ。
《作文》
教育における「過ぎたるは猶及ばざるが如し」は、子どもへの過度な期待や過保護に当てはまる。子どもの可能性を伸ばしたいという親心は理解できるが、それが度を超えると子どもの自主性を奪い、かえって成長を妨げることになりかねない。
【類似表現との違い】
「腹八分目に医者いらず」は食事の節制に特化した表現ですが、根底にある「適度が大事」という教えは共通しています。「薬も過ぎれば毒となる」は同じく過剰の害を説いていますが、「薬」という具体物に限定した比喩であるのに対し、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」はあらゆる事柄に適用できる普遍的な表現です。「中庸」は儒教の理想そのものを指す哲学用語で、このことわざの背景にある思想を一語で表したものと言えます。
【豆知識】
孔子が理想とした「中庸」の思想は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが説いた「メソテース」(中間・適度の徳)と驚くほど似ています。アリストテレスは『ニコマコス倫理学』で、勇気は「無謀」と「臆病」の中間にある徳であり、寛大さは「浪費」と「吝嗇」の中間にある徳だと論じました。東洋と西洋で独立に同じ結論に達したことは、「適度の重要性」が文化を超えた人間の普遍的な知恵であることを示唆しています。
使い方・例文
今回のプロジェクトは「過ぎたるは猶及ばざるが如し」を胸に、チーム一丸となって取り組んでまいります。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」って昔の人はうまいこと言ったよね。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉がある。この言葉は私たちに大切な教訓を教えてくれている。
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クイズ
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の意味として正しいものは?