意味・由来
「胸算用」(むなざんよう)
【意味】
「胸算用」とは、心の中で収支や損得を計算すること、つまり頭の中で見込みや見積もりを立てることを表す慣用句です。実際に紙やそろばんを使わず、心の中だけで計算を行う行為を指します。金銭に関する計画だけでなく、物事の成否や将来の見通しを頭の中で検討する場合にも使えます。やや打算的なニュアンスを含む場合もありますが、計画的な思考として中立的に使われることもあります。
【由来・語源】
「胸」は心・思考の所在地、「算用」は計算を意味します。「胸算用」は文字通り「胸の中での計算」です。この表現を広く知らしめたのは、井原西鶴の代表作『世間胸算用』(1692年)です。大晦日の一日を舞台に、借金の取り立てや支払いに奔走する商人たちの姿を描いた傑作で、タイトルの「胸算用」は、人々が心の中で金銭の工面を算段している様子を表しています。西鶴の作品以降、「胸算用」は特に金銭に関する心中の計算として広く使われるようになりました。
【使い方のポイント】
「胸算用する」「胸算用では~」のように使います。「ボーナスの使い道を胸算用する」「胸算用では利益が出るはずだった」のように、心の中で立てた計画を述べる際に使います。重要なのは、「胸算用」はあくまで見込みであり、実際の結果とは異なる可能性があるという含みを持つ点です。「胸算用では上手くいくはずだったのに」のように、計画と現実の乖離を描写する文脈でもよく使われます。また、やや打算的な計算を暗示する場合もあり、純粋な将来設計よりも金銭的な損得勘定のニュアンスが強いです。
【類似表現との違い】
「皮算用」は実現していない利益をあてにして計画を立てることで、「胸算用」より楽観的で非現実的なニュアンスが強いです。「取らぬ狸の皮算用」の略形です。「暗算」は実際に頭の中で計算することですが、具体的な数値計算に限定されます。「胸算用」はより広く、将来の見通しや計画全般を含みます。「目論見」は計画や企てを意味し、「胸算用」に近いですが、こちらは計算よりも計画の意味合いが強いです。
【豆知識】
井原西鶴の『世間胸算用』は、元禄時代の大阪を舞台にした短編集で、20話の物語から構成されています。大晦日に借金の精算をしなければならない商人社会の慣行を背景に、庶民のしたたかさや悲哀をユーモラスに描いた作品です。西鶴は浮世草子の第一人者であり、商人の町・大阪の経済文化を文学として昇華した功績で知られています。「胸算用」が特に大阪で親しまれてきた背景には、商人文化の中で「計算する能力」が高く評価されてきた歴史があります。現代のビジネスでも「胸算用」は経営者に不可欠なスキルとされています。
使い方・例文
ボーナスの使い道を胸算用しながらカタログを眺めた。
宝くじが当たったらと胸算用するのが楽しい。
彼女は胸算用で利益を見積もり、投資の判断を下した。
クイズ
「胸算用」とはどういう意味?