顔を立てる

かおをたてる

相手の面目を保つ

👋 体

意味・由来

「顔を立てる」(かおをたてる)

【意味】

「顔を立てる」とは、相手の名誉や面目を傷つけないように配慮し、その人の立場やプライドを尊重する行為を表す慣用句です。自分の意見や都合を多少犠牲にしてでも、相手が恥をかかないよう取り計らうことを意味します。「顔」は社会的な体面・面目を象徴しており、それを「立てる」ことで相手の威信を保つという日本特有の対人配慮を表現しています。組織内の上下関係、取引先との関係、家族間の序列など、あらゆる人間関係において重要とされるスキルです。

【由来・語源】

「顔」が「面目」「体面」を意味するようになったのは古く、中世の日本語にまで遡ります。「立てる」は「維持する」「保つ」という意味で使われており、「顔を立てる」は「面目を保たせる」という意味合いです。日本の伝統的な社会では、個人の面目は本人だけの問題ではなく、所属する家や集団の名誉にも関わるものでした。そのため、相手の顔を立てることは、円滑な人間関係を維持するための基本的な社会的作法として発展しました。儒教の影響を受けた「面子」(めんつ)の概念とも深く関連しています。

【使い方のポイント】

「顔を立てる」は、自発的な配慮として使う場合と、やむを得ない妥協として使う場合があります。「先輩の顔を立てて今回は引き下がる」は後者で、本心では不満があるが関係維持のために譲るニュアンスです。「恩師の顔を立てて出席する」も義理を果たす意味合いがあります。ビジネスでは「取引先の顔を立てる形で合意した」のように、交渉術としても使われます。注意すべき点として、「顔を立てる」行為が過度になると「忖度」や「事なかれ主義」と受け取られる場合もあるため、文脈に注意が必要です。

【類似表現との違い】

「花を持たせる」は相手に手柄や名誉を譲ることで、「顔を立てる」と似ていますが、より積極的に相手を引き立てる行為を指します。「顔を立てる」は面目を「傷つけない」という守りの配慮であるのに対し、「花を持たせる」は功績を「与える」という攻めの配慮です。「面目を保つ」は自分自身の体面を維持する場合にも使え、「顔を立てる」が他者への配慮であるのと異なります。「立場を尊重する」は現代的な表現で意味は近いですが、「顔を立てる」の方が感情的・文化的なニュアンスが豊かです。

【豆知識】

「顔を立てる」は日本のビジネスマナーにおいて非常に重要な概念です。例えば、会議で上司の意見が間違っていると気づいた場合、公の場で直接指摘するのではなく、個別に伝えたり、質問の形で気づかせたりすることが「顔を立てる」配慮とされます。この概念は海外のビジネス書でも saving face(面目を保つ)として紹介されており、異文化コミュニケーションの重要なテーマとなっています。興味深いことに、「顔を立てる」の反対語は「顔をつぶす」であり、日本語では面目を建築物のように「立てたり」「つぶしたり」するという空間的なメタファーで捉えています。

使い方・例文

ビジネス

先輩の顔を立てて、今回は譲ることにした。

日常会話

お父さんの顔を立てて、一応相談してから決めなよ。

作文

双方の顔を立てる形で合意に至ったことは、交渉の成功と言えるだろう。

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クイズ

「顔を立てる」とはどういう意味?

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